2010-03-06

春にして君を離れ

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー
早川書房
売り上げランキング: 76167


僕はこの物語を読むのにすごく時間がかかった。
出てくる登場人物が繊細に描写されているからそれぞれの気持ちが理解できて逆に苦しいということもあるし、主人公ジョーンの言動一つ一つに「こいつはなんて利己的な考え方をするやつなんだ」という嫌悪感が生まれたからだ。

また僕はこの本を読んだ後、ジョーンの夫であるロドニーに対する同情心が最も強く残った。自分の置かれている状況が望んでいるものではないと気付 きながらも『優しさ』という仮面を捨てきれず、しがらみから脱することの出来ないもどかしさ(本人はそれを認めようとはしていないが)に少なからず共感す る部分があったからだ。

しかし、終りにある解説で栗本薫はロドニーを「いやなやつ」という捉え方をしている。この事からもわかるようにこの本を読み終わった後に残る感情は人によって様々だろう。もしかしたら何も感じない人もいるのかもしれない。

この本は読んだ後に他人と感じたことを共有したくなる本だと思う。
僕はロドニーみたいな人生を過ごしたくはない。

0 コメント: